CONCEPT

緑のある暮らし

我が家の庭では、チューリップの葉っぱが成長し、ミモザの黄色い花が咲こうとしています。 あちこちの木で新しい芽が出始め、春は確実に始まっているんだなと思います。 我が家の庭木は、すべて一本一本選んで、購入し、家族で植えたもの。 裏庭には、月桂樹、オリーブ、トネリコ、みかん、柏葉あじさいを 玄関アプローチには、はなみずき、西洋あじさい、ミモザ、レモン、金柑、ラベンダー、クリスマスローズなど を植えています。本格的に学んではいませんが、いろいろな木や草花が好きで、イングリッシュガーデンの本などを読み漁って、愉しむ庭をと思っていろいろやってみています。

設計させていただく住まいでも 都市型の住まいでは、庭のスペースを取るということはなかなか難しいのですが、 1本の木でも、植えることができればなぁと思っています。

 

「11坪の居心地HOME」もちょこっと庭スペースをとっています。 施主さまとご相談の結果、ここには、ユーカリを植えることになりました。 家の中から楽しめる緑、目隠しになる緑、空間を広く見せる緑、夏の日差しを遮る緑、 いろんなイイ効果を期待しています。

そして、 ちょっとしたすきまにも、セダムやお花を植えてもらえたらいいなと思っています。

今「フリースタイル ガーデニング」という本を読んでいます。 著者は立命館大学教授の高田昇氏。
植物(自然)の力というものは、ほんとうに偉大ですごいなぁと思うことは多く、 インテリアの講座でも、グリーンのある暮らしの豊かさはいろいろとお話しているのですが、 とっても興味深いお話が載っていたので、ご紹介します。

1960年代からまちが衰退し、空洞化やコミュニティ崩壊が進み、治安が悪化していたニューヨークで、 リズ・クリスティという一人の女性が立ち上がったのである。 ボランティアに声を掛け、荒れ果てた土地を造成し、庭造りをはじめた。 中心に高木、芝生の広場、ローズガーデン、ハーブガーデン・・・・・・

この一つの庭が「奇跡」を呼び、周囲の環境を一変させた。 多くの人が庭を訪れ、街を見直すきっかけとなり、人が戻り始めたのである。

また、ドイツでは、未利用の小空間を生かして、地域の親子が板や棒などの材料を持ち寄り 手づくりでオリジナルの遊具や小屋をつくる試みが盛んに行なわれている。 「問題児」をなくし、子供の健やかな成長を促したり、治安をよくすることにもつながるとの考えからである。

庭や植物は人の気持ちまでも変えていくんだというこのオハナシに、感動しました。 もちろん、人の気持ちがより豊かになる庭は私自身も体感していますが、 治安をよくするとは、ちょっとびっくりなお話でした。

そして、ドイツでの子供のお話は、私の家づくりへの想いに相通じることがあるような気がして、うれしくなりました。

住まいを考えるときに、そのご家族の生活をイメージして、空間をプランニングしていくのですが、 一番大切に思っていることは、「手を抜かないこと」かもしれません。 こころを込めたお料理を食べると、心にも栄養が染み渡っていくような気がするように、 丁寧に作られたものには、温かみやシアワセが内包されている気がしています。

システム化された住まいと違って、そうやって、想いを持って設計する建築士がいてもいいかなと思うのです。

そこに住むご家族やその中の子供たちが毎日触れる住まいに心遣いや温かみがあれば、きっと目に見えない何かが伝わっていくのではないかと思っています。 特に子供たちに伝えたいことはこのことなのかもしれません。

そして、その想いが、もととなり、住みやすさや空間性、素材の吟味などにつながっていくような気がしています。 住まいづくりは心遣いの連続・・・。 どのような心遣いをするのか、人間がみんな違うように、その設計士によって違うからいいのかなと思います。